1 遺言書を作成するメリット
(1)相続トラブルを未然に防げる
遺言書を作成しておく最大のメリットは、相続人同士のトラブルを未然に防げる点です。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がありますが、考え方の違いや感情のもつれから話し合いがまとまらず、深刻な争いに発展するケースも少なくありません。
あらかじめ遺言書で誰に何を相続させるかを明確にしておけば、遺族はその内容に従って手続きを進められるため、不要な対立や手続きの混乱を避けることができます。
(2)意思を明確に伝えられる
遺言書は、ご自身の「最終意思」を明確に伝える手段です。どの財産を誰に引き継いでもらいたいのか、特定の相続人に配慮したい理由があるのか、生前お世話になった人に感謝の気持ちを示したいのか――こうした思いは、遺言書によって具体的に残すことができます。
書き方によっては、ご家族への「感謝」や「思いやり」を伝えるメッセージとしても機能し、自分の意思を正確に未来に届けるための重要な手段となります。
(3)法的効力がある内容で安心できる
法的に有効な遺言書を作成することで、自身の意思が法律上も尊重される形で実現されます。形式を満たした遺言書には民法上の効力が認められ、相続人もその内容に従って手続きを行う必要があります。
特に公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認も不要となり、スムーズな相続手続きが可能です。正しく遺言書を作成しておくことで、「希望どおりに相続されるか」という不安を解消し、安心して老後を迎えることができます。
2 遺言書の種類と特徴
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれに作成方法や効力、メリット・デメリットがあります。自分の状況に合った形式を選ぶことが大切です。
(1)自筆証書遺言
本人が全文・日付・氏名を自筆で書いて作成する遺言書です。手軽に作成できる反面、書式の不備や保管方法によって無効や紛失のリスクがあります。
2020年の法改正により、財産目録のパソコン作成やコピー添付が可能になり、法務局での保管制度も利用できます。
(2)公正証書遺言
公証人が関与して作成する遺言書で、遺言者の口述内容を公証人が文書化します。証人2名が必要ですが、形式不備による無効のリスクがなく、原本は公証役場で保管されます。家庭裁判所の検認も不要で、相続開始後の手続きが非常に円滑です。
(3)秘密証書遺言
内容を秘密にして作成できる形式で、本人が作成した文書を封筒に入れ、公証人と証人2名に提出します。ただし、公証人は内容のチェックを行わないため無効となる可能性があり、検認も必要です。実務上はあまり利用されていません。
遺言書の種類別 比較表
| 特徴項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成方法・手間 | 本人が全文を自筆で作成。財産目録はパソコン可 | 公証人が作成。遺言者が口述し、公証人が文書化(証人2名) | 本人が作成し封印。公証人・証人2名に提出 |
| 費用 | 不要(0円) | 1〜数万円程度(遺産額に応じて変動) | 数千〜1万円程度 |
| 保管の安全性 | △ 自己保管はリスクあり。◎ 法務局保管制度あり | ◎ 公証役場に原本保管 | △ 自己保管に依存。紛失・改ざんの恐れ |
| 検認の要否 | 必要(家庭裁判所で検認) | 不要(手続きがスムーズ) | 必要(内容が秘密でも検認が必要) |
| メリット | 手軽・費用不要 | 安全性・有効性が高い | 内容を秘密にできる | デメリット | 無効リスク・紛失リスクあり | 費用・証人の用意が必要 | 無効リスクが高い・実務利用は少ない |
3 自筆証書遺言の正しい書き方と注意点
(1)有効な遺言書とするための記載要件
自筆証書遺言を法的に有効なものとするためには、民法で定められた形式要件を正しく満たす必要があります。
① 全文を自筆で書く
本文は遺言者本人が直筆で書く必要があります(財産目録のみパソコン可)。代筆・ワープロ・音声入力などは認められていません。
② 日付を明記する
「令和◯年◯月◯日」など、特定できる形式で日付を自筆記載する必要があります。「吉日」などの曖昧な記載は無効となります。
③ 署名と押印
遺言者本人の署名と押印が必要です。実印・認印・拇印いずれも可ですが、実印が望ましいとされています。
④ 財産目録
財産目録は自筆でなくても構いませんが、すべてのページに署名・押印が必要です。
(2)自筆証書遺言の具体的な文例と構成解説
【文例】
令和7年8月7日
遺言書
私は、次のとおり遺言します。
1.長男 ○○ ○○に、私名義の土地(東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地)を相続させる。
2.次男 ○○ ○○に、○○銀行〇〇支店の普通預金全額を相続させる。
3.長女 ○○ ○○に、現金100万円を相続させる。
4.遺言執行者として、弁護士 △△ △△を指定する。
以上
東京都新宿区〇〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 ○○ ○○(署名・実印)
【構成のポイント】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付 | 作成日を明記する(年月日) |
| 表題 | 「遺言書」と明記する |
| 本文 | 財産の内容と相続人を明確に記載する |
| 遺言執行者(任意) | 指定すれば手続きが円滑になる |
| 署名・押印 | 本人が自署し、押印する |
4 弁護士に相談すべきケース
(1)書き方や形式に不安があるとき
形式の不備があると遺言書が無効になる可能性があります。署名・日付・押印・財産の記載方法などに不安がある場合は、弁護士に相談して確実に有効な遺言書を作成しましょう。
(2)相続人同士のトラブルが心配なとき
特定の相続人に多くの財産を渡したいなど、相続人間で対立が予想されるケースでは、弁護士の助言により、法的に適切で納得の得られやすい内容に整えることができます。
(3)財産の全体像が把握できていないとき
複数の不動産や金融資産、借金がある場合など、財産全体を正確に整理するのは困難です。弁護士が財産調査をサポートし、適切な分け方の提案が受けられます。
(4)遺言書の保管に不安があるとき
自宅で保管すると紛失・改ざん・未発見のリスクがあります。弁護士に相談すれば、法務局の保管制度の利用や法律事務所での適切な管理方法の提案が可能です。
5 まとめ
遺言書は、単なる財産分けの手段ではなく、自身の意思を明確に伝え、家族の混乱やトラブルを未然に防ぐための大切な手段です。
ただし、形式に不備があれば無効となるリスクもあり、かえって混乱を招いてしまうおそれもあります。確実に意思を残すためには、法律の専門家によるサポートが不可欠です。
弁護士に相談することで、有効な遺言書の作成だけでなく、財産の整理や将来的な相続対策も含めたアドバイスが受けられます。「まだ早い」と思わずに、早めの準備を始めることが、ご自身とご家族への最大の安心となります。
遺言書についてお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。あなたの意思を、確かな形で未来へと遺すお手伝いをいたします。
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