1 保管制度の概要
民法に規定されている一般的な遺言の種類として、自筆証書遺言や公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、遺言者本人が自書により作成するものであり、誰の目にも触れない状態で、いつでもどこでも気が向いたときに作成することが可能です。
一見すると手軽に作成できる自筆証書遺言ですが、次のようなデメリットがあります。
①家族や第三者による破棄、偽造等のリスク
②遺言書を見つけてもらえないリスク
③相続人が家庭裁判所で検認手続を行わなければならないという負担
④形式的な要件(遺言書の全文(財産目録を除く)、日付及び署名の自書、押印)の不備により無効となるリスク
⑤法律用語の使い方が誤っているため、無効となるリスク
2020年の法改正では、自筆証書遺言を法務局で適正に保管してもらうことができる制度が創設されました。
自筆証書遺言を法務局へ持参すると、遺言書保管官(法務局の事務官)が自書や押印といった形式的要件に不備がないかチェックをした上で、不備がないと認められた自筆証書遺言のみが保管されます。
また、法務局で保管する場合は遺言書を破棄・偽造されるおそれはありませんし、相続発生時の家庭裁判所での検認手続も免除されることとなるため、相続人の手間を大幅に省くことができます。
2 公正証書遺言のすすめ
もっとも、遺言書保管官は遺言の記載内容はチェックしないため、誤った法律用語の使用などにより法的に無効となるリスクは残ります。
また、年配の方であっても必ず遺言者本人が法務局に出頭して遺言書保管官と面談して保管手続を行う必要があるため、法務局がご自宅から遠い方やご病気などにより外出が難しい方にとっては利用しづらいこともあります。
この点、法律の専門家のサポートのもとで作成することができ、遺言者の事情によって自宅を出ることが難しくとも公証人が出張してきて作成してくれる公正証書遺言には、公正証書遺言の良さがあります。
専門家が関与することにより、法的に無効となるリスクを低減させることができるだけでなく、遺言者の意思を確実かつ適切に遺言書に反映させることが可能となります。
朝日信託の遺言信託では、豊富な実績と確かな専門性の観点から弁護士が公正証書遺言の作成をサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。