1 これまでの背景
従来、相続登記の申請は義務ではなく申請しなくても不利益を被ることは少ないことや遺産分割がなされないまま相続が繰り返し発生するなどした結果、所有者不明土地は年々増加しており、令和3年の国土交通省の調査によればその割合は日本国土面積の24%にも及んでいます。
不動産登記簿謄本を見ても所有者やその所在を知ることができない所有者不明土地には、公共工事や復興事業等が円滑に進められなくなってしまうという問題があります。
そこで、所有者不明土地の発生を防止するとともに、土地の適正な利用及び相続による権利の承継の一層の円滑化を図るためとして、不動産登記制度が見直され、2024年4月1日から、相続登記の申請の義務化が施行されます。
2 相続登記の義務化の概要
具体的には、相続により不動産を取得した相続人は所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければなりません(不動産登記法新法76条の2第1項)。なお、正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがありますが(同164条1項)、相続登記をすることができない事情があるときなどは相続人申告登記をしておけば過料は免れます。
また、相続登記の申請の義務化が施行されるのは2024年4月1日からですが、2024年4月1日以前の相続でも不動産の相続登記がされていないものは義務化の対象となっておりますので、注意が必要です。
3 相続登記で困らぬように
不動産を相続した場合に相続登記をせずに放置していると、将来において相続手続をしようとしても時の経過とともに相続人が増えて手続が困難になってしまうだけでなく、過料を科されるといった思わぬ事態が発生するおそれがあります。
この度の法改正により、相続させる遺言であっても遺贈する遺言であっても、相続人であれば単独で相続登記を行うことが法律上は可能となりましたが、実際に登記に必要な書類を収集したり法務局への登記申請手続を行ったりすることはかなり煩雑です。
また、相続人以外が遺贈により不動産を取得する場合には、遺言者の法定相続人全員に登記手続に協力してもらわないとならないため、遺言執行者が指定されていない場合には登記申請手続は極めて困難となります。
このような相続登記の困難さを解消するためには、遺言執行者を指定した遺言書をご自身の元気なうちに準備しておくことが重要となりますので、不動産の相続登記に心配のある方はこの機会に早めに専門家に相談されておくと良いでしょう。