1 お金の管理をいつまで自分でできるか
人生百年時代と言われ、平均寿命が延びていく現代において、定年退職後の第二の人生をどのように有意義に過ごすかという問題は、これからを生き抜く我々にとって避けることはできないものであります。
しかし一方で、健康が失われた後、お亡くなりになるまでの期間も長くなりましたので、自分自身が亡くなった時のことをだけを考えておけばよい状況ではなくなりました。
自分のお金は、自身が健康であるからこそ管理できるものであり、健康年齢を過ぎてから亡くなるまでの約10年間は自分自身の財産を適切に管理できなくなってしまい、誰かに使い込まれたりしてしまうリスクもあります。
財産が使い込まれるケースでは多くの場合、面倒を見てくれている息子や娘による金銭管理が厳格でなく誰のための支出なのかが曖昧だったりするため、いつしかそれが使い込みに当たり始めてエスカレートしてしまったケースが多く、死後に他の家族と揉めることになります。
2 転ばぬ先の杖
このようなリスクに備えるために準備すべきなのが任意後見契約です。
任意後見契約のメリットは、自身が健康である間は今までと何も変わらずに自分の財産を管理できるという点にあります。
そして、判断能力の低下などにより自分で管理できなくなってしまったときには、任意後見契約により財産の管理を任された人物が裁判所の監督の下で財産の管理をしてくれることになりますので、あなたの財産が不当に使い込まれる可能性が格段に下がります。
一方で、亡くなった後の財産の行先を決めるものが遺言になります。
遺言書を準備しておくことで、あなたの死後、相続人全員が遺産の分け方について協議する必要がなくなりますので、相続手続を円滑に行うことができるようになります。
遺言を準備していなければ遺産をどのように分けるかでご家族の意見が対立し、家族がバラバラになってしまうリスクすらあるのです。
このような任意後見契約と遺言は、いずれもあなたが健康で判断能力がしっかりしている間にしか準備することはできません。
備えをしておこうと考えたときには、相続に精通した専門家への相談をできるだけ早く始めることをお勧めします。